chapter 3 encounter

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暗転は一瞬だった。 諒成が装置が起動した、と解った瞬間に意識が遠のき、次の瞬間にはゲームの中だった。 目の前に広がる景色は見渡す限りの草原。彼以外には人っ子一人見当たらない。 そう1人も。 「うわっ。一人ぼっちかよ。」 ゲームを始めたばかりの身としては少々心細い。 後ろには誰か居るかも、と淡い希望を抱いて振り返る。 「この状況でモンスターとか出て来やがったらひとたまりも───」 ないな、と言おうとして固まった。 不吉な事を言うんじゃなかった、と思いながら諒成は武器を抜いた。 左の腰から右手で抜いたそれは幅10㎝、刃渡り70㎝程の長剣だった。左手には小振りな盾もあり、鎧は小手も脚甲もある。兜だけは無いがほぼ完全装備。動き易さを考慮して所々革を使って軽量化を図った物だ。 諒成が選んだクラスは『ナイト』。主に剣で戦うバランスタイプのクラスだ。 剣と盾を構えて眼前の『敵』を見据える。 そう、敵だ。後ろを振り返った諒成の目の前に明らかに害意を持った生物が居た。 そこには狼っぽいモンスターが3匹。群れで狩りをするタイプのモンスターなのだろう。 距離は20m程あったがすぐに詰められた。 今の距離は5m。リーダー格らしき真ん中の1匹が威嚇し、残りの2匹が少し距離を置いて回り込んで来る。 (囲んで一斉に、って狩り方か……。エグいけど堅実だな。) 敵の作戦に心の中で感心しつつ、包囲されまいとじりじり後退する。 とても冷静な対応だ。しかし内心では、 (恐ぇよ、おい。リアル過ぎ。あと涎垂らし過ぎ。) すっごいビビってました。 諒成の言う通り狼達も周りの景色も、現実と変わらない程リアルだ。当然、狼はマジで恐い。 しかし倒すなり追い払うなりしないと喰われる。 背中を伝う汗の感覚すらリアルなため、諒成はこれがゲームだという事忘れている。 膠着状態はしばらく続いた。 するて、左右の2匹が強引に回り込んだ。このままではラチがあかないと踏んだようだ。 「うっ………!」 こうなれば数が多い狼が有利だ。 ガァ! リーダー格が短く吠えると、それを合図に一斉にとびかかる体勢に入る。 せめて一矢報いたいと思いリーダー格に向かって駆け出す諒成。 その時、後ろから狼の悲鳴と、何かが固い物に突き刺さる音が聞こえた。 理由は解らないが、敵が1匹減ったという事だけは理解した。 ならばあとは2匹倒せばいい。
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