chapter 3 encounter

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「今、俺達が居る場所は………ここだ。」 諒成が指差したのは地球儀の北半球の真ん中より少し下。比較的大きな大陸の南西にある細い山脈の東側に広がる平野部だ。 地図には大陸の名はザクラス、山脈の名はバーレン、平野の名はアルヴィースと記されていた。 「一番近い町は…………ここだね。ローグラス。」 神楽が見付けた町は2人の現在地から北に少し行った所にあった。 だが問題になってくるのは方角ではない。 「この地図だと距離、分かりづらいね。」 そう距離だ。今、地図は地球儀型、つまり世界地図なのでこの地図上では少しの距離でも実際にはどれだけの距離があるのか判らないのだ。 「表示する範囲とかって操作出来ないの?」 「出来るぞ。音声入力で。」 あっさりと言い放ち、淡々と操作する。 「縮尺は1万分の1、範囲は現在地から四方10㎞を表示。」 言い終わると同時に表示が変わる。 球から正方形の面へ。 大雑把な地形だけだったのがより細かく凹凸を示す。 「あっ、あった。ローグラス。これどのくらいの距離?」 神楽は自分では考えずに諒成聞く。 そんな神楽に諒成は呆れ口調と呆れ顔で言う。 「お前、リアルでも結構バカだろ?」 「そ、そんな事無いよ!学校での成績は普通だよ!」 自信満々に言い切る神楽。 「ほう。じゃあその成績はどの辺だ?」 諒成は意地の悪い笑みを浮かべて聞く。 「………中の下?」 「中の下は普通とは言わん。バカの部類だ。」 「バカとか言わないでよ!」 「じゃあアホ。」 「同じだよ~!」 座り込み地面をバンバン叩く神楽。だが、諒成は非情だった。 「まあお遊びはこの辺にしといてだな。」 今のやりとりをお遊びと斬って捨てる。 「ここからローグラスまでの距離は10㎞ってとこだな。まあ2時間も歩けば着くだろ。」 「2時間も…歩くんだ……。」 ここでダダをこねられても面倒なのでさすがの諒成も少しフォローしてやる。 「まあ、頑張れ。限界まで疲れたら俺が背負うなりして運んでやる。」 その言葉に神楽がバッ、と顔を上げる。 「じゃあもう疲れたからオンブして!あっ、でもどうせならお姫様だっこの方で!」 「寝言は寝て言え。」 その一言だけ残して諒成は神楽に背を向け歩いて行く。 (うう、冷たい………。) 心の中で呟き、地図をポーチに押し込んで、神楽は諒成の後を追った。
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