440人が本棚に入れています
本棚に追加
「待ってよ~。」
神楽が小走りに追い付いて来て、文句を一つ。
「冷たいよ、諒成。もっとこう……優しさを!」
「無理な要求だな。この性格は神の御業をもってしても変わらないよ。」
文句もスッパリ却下。
「むぅ………諒成は人生損してるよ。絶対。」
不機嫌さを隠そうともせず、そう断言する。
「なんで?」
諒成は心の底から解らない、と言いたげな顔と声で言う。
そんな諒成の隣に並び、歩きながら答える。
「だってさ~、そんな冷血漢キャラじゃ人に好かれないよ?人生楽しめないよ?」
諒成の顔を下から覗き込みながら言う。
諒成は前を見据えたまま淡々と言う。
「……そうかもな。でも人に気を遣うとかそういうのが面倒臭くてな。」
神楽はそんな事を言う諒成の諒成の横顔を見ながら大きな溜め息を吐く。
「はぁ……。諒成は明るい彼女でも出来れば変わるのか───わっ!?」
神楽の体がガクンッ、と前につんのめる。地面の少し盛り上がった所につまづいたのだ。
そのまま前にこける──ことはなかった。
「おっと。」
諒成が無造作に肩を掴んで引っ張ったのだ。
「気を付けて歩けよ。舗装された道じゃないんだから。」
体勢を整える神楽に諒成が言う。
諒成の注意を受け神楽は、
「あ、ありがと。」
そう返すしか出来なかった。
「足、痛めてないか?」
諒成はごく自然にそう聞く。
「あ、うん。大丈夫。」
「ん。ならいい。」
神楽の返答に満足し、諒成はまた歩き出す。
神楽も並んで歩いていると、ある事に気付いた。
(歩調が……少しゆっくりになってる…。)
そう。諒成の歩調がさっきまでより遅くなっていた。
おそらくあまり急ぐとまた神楽がこけるかも、と思ったのだろう。
(優しくないんじゃなくて、優しさが自然過ぎるんだね、きっと。)
神楽はそんなことを考え、ニコニコしながら歩いて行く。
最初のコメントを投稿しよう!