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大きな鳥は2人の上空をゆっくり大きく円を描きながら飛んでいる。
「おっきい鳥だね~。鷲かな?」
神楽が能天気に言って隣の諒成に顔を向ける。
しかし諒成は神楽とは正反対に険しい表情をしていた。
「どうしたの?」
神楽が心配そうに聞く。
だが諒成は答えず、鳥を睨んだままだ。
神楽もなんとなくそれに倣い鳥を見上げる。
2人の見上げる先で鳥はまた一度大きく旋回し、
翼を畳んで急降下を開始した。
「えっ!?」
「ああ……クソ!やっぱりか!」
神楽が驚きの声を上げ、諒成が悪態をつく。
そうしている間にも鳥は近付いて来る。
「このままじゃヤバい。走れ!」
諒成が神楽の手を引っ張って走り出す。
「わっ、わっ!ちょっ、待っ──」
「待ってる暇は無いんだ。」
神楽が自分で安定して走り出したのを確認すると諒成は手を放した。
その頃にはもう鳥が凄まじいスピードで迫っていた。
「ちっ………!」
逃げ切れないと判断した諒成は剣を抜き、前への勢いを強引に殺し鳥に向き直る。
「諒成!」
一拍遅れて神楽も止まる。
その瞬間にはもう諒成と鳥は肉薄していた。
諒成は少し左に体をずらし、
「っらぁ!」
気合いの声と共に両手で持った剣を横なぎに振るう。
ギィィン!
渾身の一閃は相手を切り裂くことはなかった。
「うおっ───ぁがっ!」
それどころか逆に押し返され、背中から倒れ込む。
(やべっ………息が……!)
背中を強打し、呼吸が一瞬止まる。それに伴い力も抜けていく。
このままではつつき殺されるだけだ。
とりあえずぶん殴ってやろうとしたその時。
「グア!?」
鳥が一鳴きしながら飛び退いた。
そしてヒュン、と一瞬前まで鳥が居た場所を矢が通り過ぎる。
自由の身となった諒成は剣をひっ掴み、慌てて起き上がった。
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