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「暑い……。」 7月下旬。夏休みに入ったばかり学校の下駄箱で、夏仕様の制服を着た少年が誰もが解りきっている事を言った。 体格は平均程度といったところ。黒髪黒瞳で、髪は短く染めてはいないが少しだけ茶色がかっている。そして顔には眼鏡。以上の要素から導き出される彼の印象は『地味』。そして『普通』である。 「暑い………溶ける……。」 本当に溶けてなくなってしまいそうな口調で有り得ないことを言う。 だが、そんな事を言いたくなるほど夏の学校は暑かった。 天気予報によると今日の最高気温は38℃。誰がどう考えても暑い。 「あ~つ~い~………。」 しつこく少年は言う。見てる方は余計に暑く感じる様な光景だ。 と、そこで下駄箱から少し離れた所にある階段から、下駄箱で死人の相を浮かべつつある少年と同じ格好をした、しかし少年に比べてかなり上背も横幅もある良く言えば体格の良い、悪く言えば太り気味な少年が現れ、少年を見付けると小走りに近付いてきた。 少年はもはや暑過ぎて周囲に意識が向いていないのか、体格の良い少年の接近に気付いていない。 背後まで来た体格の良い少年は悪戯っぽい笑みを浮かべながら体同様大きな手を振り上げ、 「何死んでんだよ、諒成(リョウセイ)!」 校舎に響く大声と共に振るった。 バシン!と良い音が鳴り、諒成と呼ばれた少年はあまりの衝撃に2、3歩前へ進み、痛みのためしゃがみ込んだ。 「~~~~~~っ!!」 相当痛かったらしい。 が、しかし。叩いた方の少年はというと、 「ブワハハハハハ!クリーンヒットだ!」 悪びれた様子もなく腹を抱えて大爆笑していた。
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