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「てめぇ……何しやがる、湧喜(ユウキ)!つーか笑うな!イテーんだぞ!?」
痛みは治まったのか少年──門生諒成(カドウリョウセイ)が怒鳴る。
しかし体格の良い少年──御劔湧喜(ミツルギユウキ)は怯んだ様子もない。
体格は全体的に太り気味。髪は短い黒髪で、一本一本がツンツンと逆立っている。瞳は墨を落としたような黒。だが体格に目が向き過ぎて、見た人に『太い』という印象しか抱かせない感じだ。
湧喜は突然笑うのを止め、わざとらしく驚いた真似をして言った。
「おお!生き返った!」
「まず死んでねぇ!」
まるで漫才である。
それから2人はしばらく漫才じみた言い合いをしていたが双方疲れてきたのかどちらが先という訳でもなく言い合いを止めた。
微妙な間が出来た。
沈黙を破ったのは湧喜だった。
「んで?どうしたんだ?お前が夏休みだってのに学校来てるなんて。珍しい事もあるもんだ。」
という湧喜の問いに、
「そういうお前こそなんで居るんだよ。」
質問で返した。
「俺は補習。1学期成績ヤバかったんで強制的に。」
気にした様子も無く答える湧喜。そしてまたさっき自分の質問を繰り返す。
「で、お前は?」
諒成も今度は素直に答える。
「バイトの許可もらいに来た。」
その言葉に湧喜が反応した。
「バイト?どこで?」
「ほら、あれだ。えーと稀代の天才とやらが発明した新型ゲームのβ版。あれのテストプレイヤーやる。」
「あれってバイトなんだ………給料いくら?」
その質問に諒成はニヤリと笑って答える。
「フッフッフ。聞いて驚け。なんと3日間テストプレイするだけで10万だ。」
「何ぃ!?」
破格の給料に湧喜が驚く。
「まあ、3日間っつってもゲーム内での時間は3ヶ月。なかなかの長期バイトだぞ。」
「それでもただゲームして遊んでるだけで10万は有り得ねぇほど美味しい話じゃねぇか。それってまだ募集してんの?」
万年金欠の湧喜は話に食い付く。
「まだ200人近く雇うみたいだったな。今から応募してバイトの許可取れば十分参加出来るんじゃねぇ?」
「ぃよっしゃあ!そうと決まれば早速応募だ!どこで応募すりゃいいんだ?!」
興奮し、ガッツポーズで聞いてくる湧喜に諒成は冷静に答える。
「ケータイで出来る。まあ、そっちはすぐに出来るから先にバイトの許可もらって来いよ。」
「了解!」
威勢良く答えて職員室に向かって駆けていく。
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