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時は流れてテストプレイ当日。
会場である葛城シーランドは2人の住む地域から近い場所にあるので、諒成と湧喜は歩いて向かっていた。
その途中、恐らく彼らとおなじテストプレイの参加者であろう通行人の中に見覚えのあるヒョロッとした後ろ姿を見付けた。
「勇夜(ユウヤ)!」
呼ばれた細い少年は、声に反応し振り向いた。
彼の体格は前述した通り細く、背も諒成より少し高い程度。髪は少し天パ気味な黒髪で、瞳は濃い茶色である。
その振り返った顔を見て湧喜と諒成はやはり、と顔を見合わせて彼に駆け寄った。
2人がたどり着いたところで細い少年──早馬勇夜(ハヤマユウヤ)が口を開いた。
「なんだ、お前らも参加してたのか。」
彼は2人の同級生で、湧喜の幼馴染みだ。高校は諒成達と違う所に行ったので補習や部活の関係で夏休み中はあまり遊べていなかったので少し久しぶりだ。
だが割と普段からよくツルんでいるメンバーなので歩きながら3人で話す。
話ながらも歩調が早目なのはやはり、3人とも楽しみなのだろう。
そしてしばらく歩いていると目的地が見えてきた。
葛城シーランドはごく最近出来たアミューズメントパークだ。
敷地面積やアトラクションの多さも注目されたが、中でも特に関心を集めた要素が今回3人が参加するゲーム、〈アイオーン〉である。
正確には『今〈アイオーン〉がある場所』が、だ。
シーランドが完成し開放された当時、施設内には敷地面積の1/5に及ぶ空白があった。
これ程の空白が将来何に使われるのかかなり注目されていたが、葛城カンパニー社長は「いずれ判りますよ。」の一点張り。それがまた人々の関心を呼んだ。
〈アイオーン〉はその空白の1/5を全て使って建造された。
しかも最大収容人数5万人の大施設である。
葛城カンパニーは焦らした分、期待を大きく上回る結果を出したのだ。
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