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『すみません』
『あっ、はいっ、いらっしゃいませお客様』
由紀の声が届いていなかったのか、スタッフが驚いたと言わんばかりの対応をした。
けれども、彼女の笑顔に負けてしまい、こちらも笑顔になる。
『お探しものですか?』
『はい、このワンピなのですが…入口にありましたよね?』
スタッフは写真を確認する。
……どうか、ありますように!
『はい、そうですね。あちらになります。大人気なので、もしかしたらラストかもしれませんね…』
由紀と紗枝は顔を見合わせた。
……取り置きなんてしてる場合じゃなくない?
この真っ白いワンピースに、花のように鮮やかな百合が包まれる。
百合なら、着こなせる。
百合に着てほしい…!
『今年水着買うのやめるわ!百合いないとつまらないし!』
『ズルイ由紀!じゃあ私も買うのやめる!』
二人は顔を見合わせて、一度だけ頷いた。
『すみませんっ!』
さっきより大きな由紀の声が響いた。
『はい、お伺いします』
『このワンピース買います。あと、これに合うサンダルも』
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