事の始まり

2/14
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
山に迷い込んだ少年は、死にかけていた。 死にたくない… と、願いながら。 空腹は限界を超え… とうとう、 動けなくなった。 視界も、靄がかかった様に、白いで来た。 「死に…たくない…」 見えなくなり始めた視界に、強い光が差し込む。 「死にそうなの?」 柔らかい声色、 神々しい光に包まれた、前髪に金の筋が一房ある、足元まである長い白い髪の美少女が少年を覗く。 「神…様?」 呟く少年の瞳から、一筋の涙が伝い落ちる…。 「死ぬって、どんな感じ?」 やたらと明るい声で、訊く少女に 「…死にたく…ないよ…神様なら…助けて…」 悲痛な心で“願った言霊” 必死な“願い”は、神の心を動かした。 否、 元々好奇心の強いこの少女の神は、“死”に強い“憧れ”を抱いていた。 だから、 最初の時点で助けてやれたであろう少年が、死の縁に立つまで放って置いたのだ。 残酷とも思える仕打ちだが、神とは、そうした生き物なのだ。 まだ若い神は尚更残酷で、この少女の神も、若く、無知であった。 自分の役目を放棄し、好奇心を優先させ… 長い、旅に出る。 「女神“コトノハ”その願い、聞き届けたり…」 コトノハは、光を放ち。 少年を優しく包む。 光が止んだ時、 そこに立つは、女神コトノハ。 足元で伏した少年は、事切れていた。 ただ、 女神の髪の色が、黒に変化していて。 「オレは…?」 女神が出した言葉は、女性らしからぬ言葉遣い。 そう、コトノハは“死”を望み、少年は“生”を望んだのだ…。 それから、千年の長い月日、少年は女神を勤め。 女神は、輪廻を繰り返した。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!