鏡の中の記憶

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【出会い】   『まこと荷物運んで』  「あっわかった」 俺はまこと、新谷誠(しんやまこと)だ。   今日この家に、いやこの町に引っ越しして来たばかり。 17才の俺が、これまで引っ越しして来た回数は数えきれない。   『誠何してるの!』   「はいはいわかった!」 全く人使いが荒い。 俺は、アパートの入り口に大量に積まれた荷物に目まいを覚える。   「これ全部運ぶの?」  『なに言ってんの、これはあなたの荷物よ』 『さっさと運んだ』   「へいへい」 俺は荷物を持ち上げると、奥の窓際の部屋、多分俺の部屋になる所に荷物を運ぶ。 部屋の扉を足で開け放った。   壁に掛けられた鏡が目に入る。 これって最初からここに掛けてあった見たいだ。 まぁいいか。 俺は手早く荷物を部屋に運び入れる。   これからの転入届けや何やらを考えると頭が痛くなる。 さっさと終らせるか。   そう思ってふっと壁を見ると、鏡の中に俺の疲れた顔が。 寝不足も手伝って酷い顔だ。 俺は鏡を覗き込んだ。  酷いな。
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