鏡の中の記憶

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その時後ろで椅子が倒れた。   振り返って見る。 そこには何もなかった。   なんだ気のせいか。 気のせい!? そうか? 引っ越しっして来たばかりの部屋に椅子なんて置いてない!   俺は慌てて鏡を見る。   そこに在る筈のないものが写っていた。 見た事のない家具。 そして幼い少女。 歳の頃は12、3ってとこか。 俺はその場に腰を抜かし尻餅をつく。   少女は不思議そうにこちらを見た。 振り返ったが、むろん少女の姿は何処にもない。 俺は鏡を、恐る恐る覗き込む。 !? 少女はいつの間にか、鏡の前に来てこちらを覗き込んでいた。   少女は口をぱくぱくして何か言っている。 その余りにも幼く、滑稽な姿に、恐怖を忘れ笑ってしまった。   その様子を見ていた少女は口を尖らし何処かに行く。   俺は急に寂しくなって鏡を覗き込んだ。 少女は引き出しからマジックペンを引っ張り出すと、鏡の前に走って来る。 ??? キュッキュッキュッ マジックで何か書く。  (笑うな!) "ぷっ!"  思わず吹き出す。 見た目以上に幼いのかもしれない。
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