9/11
前へ
/54ページ
次へ
こんな物の出す音で皆、オバケだオバケだと騒いで逃げ出していたのか。 そう思ったら、ひどく笑えた。 再びラクガキ猫が口を開く。 「君も他の子供達のように逃げ出すものとばかり思っていたのだが、そうではなかったのでね。ついつい声に出てしまったのだよ」 「そう……なんだ」 怖すぎて動けないでいたなんて、今さら言えなかった。 「せっかく、こうして知り合いになることができたんだ。君の名前を教えてくれないか」 ラクガキ猫は、そう言って僕を見る。 「ええと…僕の名前はルイン。ルイン・グラッツ」 「ルイン……ルインか。なぜだか、ひどく懐かしいような……そんな名前だ。なぜだろう」 僕の名前を聞いた途端、猫は再び首をかしげて、そう言った。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加