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そして到着。 「……あれ?」 僕はあちこちを見回してみた。 しかし、声の主はどこにも居ない。 まさか本当に……と、背筋が凍った。 「……どこを見ているんだ。私はここだよ」 「……ひっ」 声がする。 しかし、人間らしき姿はどこにもない。 「……どこ……なの?」 「ここだ、もっと下。そうそう、ほら。今、君が見ている猫のラクガキ。私だ」 ……信じられなかった。 いや、その時は立っているのがやっとの状態で信じるとか、信じないとかより……それより。 「ラ、ラクガキ?」 震える声でまじまじと、そのラクガキを見た。 シュッと背筋の通った、品のある黒猫のラクガキ。 まさにラクガキだった。
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