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「にゃぁ……」
──ん? 猫?
「にゃぁ」
まただ。
暑いのは大の苦手だが、猫は大好きだ。
知らんぷりなどできない。
迷わず窓を開けベランダに出た。
「うわっち!」
マジで暑い。
焼けたベランダから身を乗り出し、あちこち見渡す。
我が家は南向きの一戸建だ。
田舎なのでけっこうな広さの庭がある。
南側には家庭菜園。
西側はいろんな種類の植木が、もっさりと生い茂っている。
家の周りを囲む生け垣。
その向こう、南側と東側は路地だ。
その垣根の根元に猫がいた。
土に尻をつけ、植木の方を向いて鳴いている。
身体全体は白く、頭と背中の半分と尻尾が濃い灰色をしている。
ちょくちょく見かける近所の神社をねぐらにしている野良猫だ。
オレが把握してるだけでも4匹いる。
「にゃぁ」
優しい声で何かを探すように、同じ調子でずっと鳴き続けている。
悪戯で鳴き真似してみた。
「にゃぉーん」
──わっ! 振り向いた!
「にゃーお」
いま大変なんだから邪魔しないで──そんな顔つきと鳴きかただった。
「すんません」と、猫に頭を下げて謝る低姿勢なオレ。
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