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首をすくめておとなしく様子を見ていると、植木の下から子猫が後退りしながら出てきた。
──子供を呼んでたのか。
と、頬がゆるんだのも束の間。
植木がガサガサと波立ち、柴犬くらいの大きさの白い犬が飛び出してきた。
赤い首輪を着けている。
親猫が先に立って子猫も続き、一目散に垣根をくぐる。
追いついたワンコも必死に垣根をくぐろうとしている。
「うわ、ヤバいって!」
オレは普段なら考えられないものすごい勢いで階段を駆け降り、サンダルをつっかけるのももどかしく玄関から庭へ走り出た。
──いない。
路地に回ってみる。
「あ──」
引き紐を持った大仏みたいなヘアスタイルのおばちゃんが、「もう、ダメじゃないの! すぐ逃げるんだから!」と怒鳴りながら、首輪に紐を繋げている。
猫たちの姿はなかった。
──逃げられたみたいだな。よかった。
大仏おばちゃんにひとこと文句を言ってやりたかったが、すでにワンコにずるずると引きずられ、かなりの距離を走って行ってしまっていた。
──まぁ、いっか。
ホッとして苦笑いをこぼし踵を返した瞬間、どっと汗が吐き出した。
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