紅、闇に泪

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  桜歌には、理解出来ない。 邪神に魂を売ると云う事は、自らの魂と肉体を邪神捧げると云う事だ。 長期間体内に邪神を宿し続ければ、生命力の強い吸血族と云えど、寿命は確実に縮む。 そして―― ……やがて、躯(からだ)の内から、邪神に喰われるのだ。 その様な危険を犯してまで、何故。 それ程に我ら一族の争いを集結させたい理由が、あの男の執念が、桜歌には解らなかった。 中庭を一望出来る一室の前で、足を止める。 首領の自室として与えられる間の前。 外界とを区切る硝子窓に手を掛けて、それを開けた。がた、と、やや耳障りな音がした。 窓一つ分を開けると、そこは小さな縁側になる。 吹き込む風が心地良い。 裸足のままの足を放り出して、そこに腰掛ける。 桜歌は虚ろな眸で、ただ、中庭を眺めていた。 きっと、理解出来ない。 理解しようとしたとしても。 己よりも永く生きている彼の思考には、恐らく、生涯を懸けても追い付く事は出来ないのだろう。  
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