第9話

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『結局はさ、蓋開けて腰据えて、触れてみないと、他人の事なんて判んないのよね』  煙草の煙を見つめて  マナミは言う。 『うわべだけ判ったフリしたり、中途半端に聞きかじったりしても、誰も得なんてしないのよ』  煙は流れ  広がり  消えていく。 『だからさ、俺なんかが看取っても、救った事になんてならねぇんじゃないか、って』  煙は揺れながら  また生まれ  消えていく。 『…時々、思うわけさ』  マナミは  煙草を揉み消した。            
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