第3話・2

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【就業日誌】  3月◯日  天気・雨  記入者  玉置 由親  事件現場に行ってから  数日後  マナミと僕は  いつも通り  事務所にいた。 ……Pi・Pi・Pi・Pi・Pi…… 『…んぁ~お、嫌な予感~』  そう言いながら  マナミは電話に出た。 『あぃよ~。…うん、そうだと思ったわよー。…判った。チカちゃんも連れていくから』  僕らの嫌な予感は  どうやら  当たったようだ。 『また通り魔だってさ~』 『近くですか?』 『んにゃ、こないだとは逆方向で、ちょい遠いな』  どの事件も  現場は  被害者の自宅付近で  広範囲に及ぶ。 『また聞くんですか』 『ん~?まぁ、だろうねぇ』  またマナミは  負荷を負ってまで  聞きたくもない声を  聞くのだ。 『なぁ~にチカちゃん、心配してくれてんの~?そんなんしたって俺は脱がないわよ~』 『…脱がなくていいです』 『え、いいの?いや脱ぐよ俺。逆に脱ぐよ』 『眞浪さん』  目が合った。  深く深く  黒の濃い目だ。 『大丈夫よ、チカちゃん』  マナミはそう笑って  僕の頭を  ぐしゃぐしゃにした。          
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