第3話・2

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『八島から何を聞いたんだ』  沢矢が  マナミを見据えて  言った。 『ほとんど聞いたよ。ムナクソ悪いガキだったわ』  僕が見た限りでは  八島という少年は  先日見た中野と  少し違った  思念を纏っていた。  それは  後悔のない  純粋な  狂気だったのだ。 『世の中だとか、自分の周囲の人間だとか、そういうもの全部が腹立たしかったんだと。  生きてるのも嫌になるくらいにね。  だからあいつらは、今までに味わったことのない刺激を体験して、死ぬ方法を考えた』 『…人を殺して、自分が殺される』 『そう』  沢矢は  自分が放った言葉を  呪うように  顔をしかめた。 『そいであいつらはまず、秘密を共有した。それが俺の見た、死体を囲む奴らの映像だ』  男の死体を囲む  数人の人間。 『集まったあいつらは、その中から一人を選んで、殺した』  そうして  脱落者のないように  歪んだ絆を作った。 『それから順番を決めて、最初の奴を殺した人間を、次の奴が殺す。んで、そいつは次の奴に殺される』  死の連鎖。  殺しの輪。  連なる度に  繋がる度に  誰かが消える。                
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