第3話・2

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 どうしてマナミは  危ない思いをしてまで  聞こうとするのだろう?  それをずっと  考えていた。 『今回みたいなさぁ、ドス黒い思念の奴らってさ、恨みやら妬みもそうだけど、後悔が1番強いのよね』  マナミが  久しぶりの煙草に  火をつけた。 『だいたいが自分で死を選んでる奴らだからさ。  止めときゃ良かったとか、もっと生きたかったとか、そういう後悔』  雨上がりの  湿った空気が  少し冷たい風に  流されていく。 『よく人は《死ぬ勇気がありゃなんでもできる》なんて言うけど、無理なんだよねぇ。  だって死ぬことしか考えてないんだもん』  風に乗って  マナミの  煙草の匂いがした。 『でもさ、死ぬ間際に  《痛い》だとか  《苦しい》だとか  《怖い》だとかって  弱い、逃げの感情を、大事にしてほしいと思うのよね。  それって、生きる本能だからさ』 『そしたら、ああいう奴らを見なくて済むじゃない。  俺が。』 『あ、自分?』 『そう、自分ですわよ。何言っちゃってんの~この子~』          
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