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「マスター、酒が切れたぞ」
その一触即発の空気を知ってか知らずか、横で酒を飲んでいたルフドが空っぽになった瓶を置いた。
普通の酒よりも少し強いほどなのだが、酒に強いルフドは少しも顔が赤くなっていない。
毒気を抜かれてシンは舌打ちし、座り直して再び報酬金を睨み付ける作業に戻り、マスターは新しい酒をルフドに注いでやる。
ちなみに、ルフドはちゃんと金を払っているから、マスターの標的外だった。
それにも少々苛立ち、シンは余計にもう一回だけ舌打ちする。
「でも、最近はいい稼ぎにならないわね」
くしゃ、と紙を握りつぶして、深い溜め息を付く。
「ああ。フェンリルがほとんどの犯罪者グループを掌握していたからなー。頭が潰れれば、ただの烏合の衆だ」
マスターの言う通り、フェンリルが消えてグループが分裂してからというもの、賞金首の数がめっきり減少してしまった。
フェンリルに深く関与していた幹部の数グループを除けばほとんどのグループは弱体化してしまい、今では賞金稼ぎは暮らしにくいほどになっているのだ。
今では、賞金稼ぎだった者が賞金を掛けられ、他の同業者に狙われるという本末転倒なことも少なくは無い。
そのせいで、この街は未だにこうして犯罪者の街で有り続けているのだ。
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