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そしてもう一つ、シンが納得できないことがある。
「それって……、やっぱり詰め物でしたー、なんてことはないわよね?」
「ち、違いますよっ!」
恨めしそうに見るシンの視線が恥ずかしかったのか、ミミカは胸元を腕で慌てて隠す。
そこには、身長以上に神秘としか思えない豊かな膨らみがあった。
身長と同じように、最初はシンより少しはあるぐらいだった。
だというのに、伸びゆく身長と見事に比例を果たして、今では(シンだけが)目を背けたくなるような結果を残したのだ。
懸命に隠そうとするミミカを裏切るように自己主張する胸を見る度、シンはいつも激しい劣等感に苛まれる。
こればかりは、身長のように楽観的な見方ができなかった。出来るはずが無かった。
「…………」
しばらく四苦八苦しているミミカをじっと見て、ふと自分の胸元を撫でてみる。
スカッ。
「「………………」」
見事なぐらいの手応えの無さに、それを見ていた酒場の全員が静かになる。
暖かいはずの室内に、寂しい寒風が吹いた気がした。
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