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当てられた薄い新緑色の刃に、一気に怒りから我に帰ってから、そーっとミミカの胸から両手を放す。
そしてそのまま降参を示す両手を上げたポーズをしてから、ちらりと振り返った。
長い白金色の髪。
冷たく光る瞳。
身体に纏う白い燕尾服。
手に持っているのは、華美な鎖が幾重にも巻き付けられた大鎌。
真っ白な死神。
どことなく奇妙な格好の彼を喩えるなら、こんな言葉だろう。
だが、纏った殺気は本物で、突き付けられている刃から、本気で殺すという意思がびしびしと伝わってきた。
すごい怖い。
「ちょ、じ、冗談よ……冗談。よくあるスキンシップよ」
「言い残す言葉は、それで終わりか」
「死神さ……、じゃなくて、キース。私は、大丈夫ですから。ね?」
まだ赤くなって胸元を直しているミミカがなだめると、特大の舌打ちを残し、キースは大鎌を下ろす。
ほっとしたのにいらっときたのか、シンが長い髪を突然掴まれて、ルフドの方へと放り投げられた。
「そちらの主人に、下手な嫉妬は身を滅ぼすと学習させるんだな」
キース・リキッド。
ベルの能力者の一人であり、三年前まではフリーの用心棒『死神』として犯罪者を護衛していた。
しかし今は、ミミカのボディーガードとして側に付いているのだ。
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