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だが、偏執狂といえばもうすでに一人存在していた。
「いやーでも、ミミカ様に怒られるのであれば、私としては喜んで罵倒されましょう。むしろ、してください! さあ! さあ!!」
バレルがミミカの前に跪き、両手を広げる。
その表情は、まるで神からの託宣を待つ宣教者のようである。
「相変わらず毎回気持ち悪いですね、バレルさん」
「ありがたきお言葉!」
ミミカは心のままに言ったのだが、バレルは頭を床に付けてさえいる。
もはや異常者だ。
「ねえ、あいつって昔からあんな感じだったっけ?」
「いや、昔はいたってまともだったのだが……」
キース自体も、同じ護衛者である男の変貌には抵抗があるのだろう。
「簡単ですよ。お嬢さん」
いまだひれ伏したままで、バレルは顔だけシンの方に向ける。
「私は過去に、ミミカ様の威圧感の前に屈伏しました。最初はその時の、どこか満足感のある気持ちが分かりませんでしたよ」
まるで演説を聞くかのように、土下座しているバレルを中心に全員が静まり返る。
「ですが、遂に私は分かったのです!」
バネのようにびよんと立ち上がり、床を強く踏んで機械の右拳を高々に掲げた。
「私はドMであると!!」
「あほかぁ!!」
間髪入れず、シンとキースの蹴りが炸裂する。
だが、堂々とマゾヒスト宣言をしたバレルには無意味どころか逆効果だった。
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