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第二区、東街の中央街……。
深い闇に包まれ、繁華街の照明が照らす空に、二つの影が飛んだ。
「四番の報告では、この位置だ」
一人は肩まであるぼさぼさ気味の紅い髪の青年だった。
年は二十ほどだろうか、輪郭のしっかりした顔つきで、身体も無駄な筋肉のない身体付きをしている。
彼は凍て付くような寒さであるというのに、身体にはノースリーブで薄い黒の戦闘服とズボンのみを纏っているだけだった。
しかし、彼は鳥肌を立てるどころか、寒さなど全く意に介した風も無い。
「わかった。一気に行くわよ」
そしてもう一人は、全身に黒衣を纏った少女だった。
年は十七歳ほど。
長い金髪の上にはこれまた黒いニット帽を被り、手や足の武骨なグローブや靴も黒で統一していた。
唯一の色は、金の髪やツリ目がちな両目に宿る青い瞳、そして黒衣から覗く白い肌ぐらいであった。
そして、その少女を一際大きく目立たせるものは、背中に担いだ大剣である。
長方形の形をした黒い刀身には斬る為の刃はなく、斬るというより叩き潰すことを目的としたような剣であった。
これも黒で統一されており、どこか無機質で危険な威圧感が秘められているようである。
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