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その少女が空中で大剣を手に持ち、口許に笑みを浮かべる。
眼下に見える明かりの更に下、暗闇に蠢く獲物達を青い眼が捕らえていた。
そこでようやく、重力が二人を引っ張り始める。
「ルフド。あんたは周りの残党を始末して。あたしは親玉を眠らせる」
「了解した。シン」
重力による加速が最高潮に達した時にようやく、下から銃弾が飛んでくる。
が、その反撃はすでに遅かった。
少女の背中が隆起したかと思うと、黒い硬質の翼がバサリと広げられて空気を斬り裂いた。
「さあ、おやすみの時間よ。悪い子供達」
この街、スノウギルには三年前から、一つの噂が犯罪者達の間で囁かれていた。
街の中心に聳える時計台が十二時の鐘を鳴らす時、犯罪者達を刈り取る賞金稼ぎの二人が現れる、というものだ。
その二人に関する情報は何も残されておらず、少ない目撃者からの情報によって、二人の通称が明らかとなる。
荒ぶる炎を纏った青年、『紅蓮』と。
彼を従える少女、『喰神』。
人も武器も建物も、あらゆるものを壊し、潰し、瞬く間に喰い散らかしていく。
彼女達によって潰された組織は、両手足の指を用いてもまだ足りないほどだった。
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