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辺りから煙が立ち上ぼる瓦礫の山の上で、シンは真上に見える満月を見上げていた。
その隣りに、ルフドは無言で座る。
「どうだった? 何か手がかりになるものはあったか」
「全然よ。真新しい情報は紙一枚もなかった」
しばらく互いに月を見上げてから、シンは溜め息混じりにそう言った。
瓦礫と化した研究施設からは、結局何も有力な情報は得られなかった。
彼らが研究していたのはシン達の持つ不思議な能力、『ベル』についてであった。
三年前、シンはリクセムと戦い、いくつかの真実を聞かされていた。
この街が、巨大な実験場であるということ。
そして、自分がただのベルの能力者ではなかったということである。
それを解き明かそうと、シンとルフドは今までに数多くの敵と戦い、情報を集めようとした。
ここにあった研究施設も、その一つであった。
だが、一向に有力な情報は得られないままである。
いくつも見つけては潰していっているのに、一体いつになったら……、
「少し落ち着け、シン」
ルフドにそう言われて、シンはようやく剣の柄を強く握り締めていたことに気がついて苦笑した。
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