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「こうやって潰して行けば、いつかは何かわかるはずだ。もうフェンリルも無い。そんなに焦るなよ」
「な……、うるさいわね! 別に焦ってなんかいないわ!」
見透かされている感覚に少しムッとしたが、ルフドの言葉に少しだけほっとしていた。
そう。もうフェンリルはリクセムを失って分裂し、今ではいくつかの小さな組織に分かれてしまっている。
もう、ブリザードが本格的に動くような事件はないのだ。
そう思うと、シンは少しだけ胸が軽くなる気持ちがした。それを口に出して言うのは、死んでもごめんだが。
「……、『時は流れて幾重も回り』」
その言葉は、あの戦いが終わってからふと思い出した、不思議な詩だった。
「『幾重の鐘が夜空を揺らし、幾重の瞳が見上げて凝らす』」
知らない詩であった。
だが不思議と、口から自然と零れ落ちて行く。
「『幾重の人列はその手を掲げ、彼の空に捧げよう』」
まるでそれは、抑揚のない唄のように、静かに静かに、夜の闇へと溶け込んだ。
「『全てに一つの安息を』」
静かに、静かに……。
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