死章

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やがて創始たる宇宙から一人の大天使が降臨する。それは誰も見たことのない天使で、女神にも等しい存在だった。 その絶対潔白の美しい天使は閉じていた瞼をゆっくりと開き、両者を認識した。 「私は世界の創造を司りし者。古の盟約に従い参りました……」 その声は世界を何重にも反響した。吹き抜けていくような聖なる声。降臨した女神に二人は一瞬意識を奪われる。 「聖女フィーネ……」 カルディアはぽつりと、その名を口にした。 聖女フィーネはこの世を創造したとされる神だ。神はこの世界を創造した際、四つの守護神を残して去っていった。その守護神こそ四大聖竜。今、四つの力は一人の手に収められている。召喚が可能になったのだ。 本来ならカルディアがここで望む新世界を叶えてもらうのだろう。しかしカルディアに決定権はなかった。今、運命を握っているのはブライド、ただ一人である。 「貴方はブライドですね?今までのいきさつ大体把握しました。私を此処に呼んだ理由はやはり世界の創造ですか?」 聖女フィーネは瞼を閉じてブライドに尋ねる。カルディアは仰向けになったまま不適な笑みを浮かべていた。所詮はお前も俺と同じと。ところがブライドが口にしたのは意外な言葉だった。 「世界は創造しません」 その言葉に聖女もカルディアも意表をつかれたように目を細めた。 「では……どうするのですか?」 ブライドは大きく息を吸い込んだ。あの世界で過ごした事が走馬灯のように流れていく中で、ブライドは決心を固めたのか、聖女フィーネに向き直る。そして、
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