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「朝ですよ博士。いつまで寝てるんですか?」
「……さっき目を閉じたばかりなんですけどね」
「さぁ今日も沢山のオーダーがきてます。ちゃんと目を通してくださいね」
白衣を着た女性はそう言って脇に抱えていた書類の束を机の上に広げた。そして窓際のカーテンを勢いよく解き放つ。途端、突き刺すくらいの痛い朝日が椅子に座る赤髪の博士を照らす。それを手の平を掲げてガードする。
するとムスッと眼鏡の女性は不満を表にした。研究者らしい潔癖さからは感情の起伏ははっきり見える。それほど博士に入れ込むのは助手である証拠だ。
「コーヒー入れてきますね」
そう言って助手は書斎から出ていった。暫く椅子に座って寝ぼける博士。博士といえどもその風貌は好青年でも通じるレベルだ。
博士は横目で目の前に積まれた書類の端を撫でると、拒絶するかのように手を引いた。
「全く人をこき使い過ぎですよ。もっと人を雇いましょうかね」
後ろめたいため息をつくと立ち上がって窓際について、3階ほどの高さから町を見渡す。気持ちのよい風が町を吹き抜け、眠気までさらっていきそうなほど心地好い風だった。
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