エピローグ

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空を仰げば竜の姿もある。竜といっても飛竜だ。本物の竜達と言えば普段人の形をとっている。むしろ人の姿でいないと不便なのだ。普段は人間と変わりない生活をしている。 竜界との国交が結ばれてからは盛んに交流も行われている。向こうの進んだ技術を取り入れ、文明も十年前に比べれば大分発達した。あの大戦の傷跡はまだ残っているが、世界の戦後復興は峠は越えている。 特に、マドラス崩壊に伴って被害の甚大だったレイルードが一番復興したと言える。 博士は窓から離れて椅子に座る。そしてペンを取って書類に向かった。大半が義足や義手といった物の精算書。部品の調達費がこと細かに記載されていた。そう、此処は義足義手を扱う研究所兼会社なのだ。 博士は頭を掻きむしると、胸のポケットから仕事用の眼鏡を取り出しそれをかける。 と、そこに下の階に降りていた助手が上がってきた。 「コーヒー持って来ました。本日はブラックです。ちゃんと働いてくださいね代わりはいないんですから」 「厳しいですね相変わらず」 「どういたしまして」 苦笑いしながらも博士はティーカップを手に取った。助手はそのまま立ち去ろうとしたのだが、何かを思い出したのか膨れたポケットから何かを取り出すと、それを博士の目の前に差し出す。 「手紙です」 「よかったまた書類かと思いましたよ……っ!」 「どうかなさいましたか?」 何通かの手紙を手にした博士はその宛名を見て固まった。助手は怪訝そうな表情を浮かべたが、空気を読んで書斎を後にした。 助手が階段を降りて完全に立ち去るのを耳で確認すると、引き出しからペーパーナイフを取り出して次々と便箋を開く。そしておもむろに一枚の手紙をまず手にした。
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