忘却

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別にパニクったりしない。 頭が真っ白な分、焦る理由がないのかも知れない。 上体を起こしてみる。 すると病院の病室内が、より鮮明に見えるようになった。 どうやら、自分以外には誰もいないようだ。 こんな状況では、病室のドアが異常に目立ってしまう。 ふと、自分の姿が目に入った。 腕には点滴かなんかのチューブが繋がっていた。 それがとてつもないくらい嫌な感じがして、思いっきり引っ張って、腕から外す。 右腕には包帯が、いかにも「ここ、ヤバイっす」ってくらいに丁寧に巻かれている。 これにもなんか嫌悪感があったが、さっきほどではないので放っておく。 他は… ぐるっと辺りを見回す。 あ。 このベットの傍らに、おそらく病院のものであろう椅子が、ぽつんと立っている。 てことは、自分には看病してくれた人が、いる? 思ったちょうどその時、病室のドアの向こうから、パタパタとスリッパの音がきこえてきた。 なぜか、胸が、ざわついた。
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