休み

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一歩ずつ――ゆっくりと男に近寄る度に怒りで頭が痛くなり、耳から聞こえる音は少しずつ減っていく。 昔あの世界にいた時常に感じていた感情――その感覚に身体が一瞬だけ震えた。 今男は謝る女の腕を掴み店中から強引に連れだそうとしている所。謝るだけの女に嫌気がさしたのだろう。 こんな奴がランクSSSか。こんな奴がロウスと一緒。 それだけで頭が汚染される。怒りと言う感情しか湧かなくなってくる。 人の憧れ、恩人が持つ偉大なランク。それを目の前で汚す一人の男。 その男が――筋肉でゴツゴツした腕を豪快に振り回し――女の顔を殴った。 反動で吹き飛び女はお菓子がある棚へ衝突する。 それを近寄りながら見ていたら――視界が激しくブレた。頭痛はどんどん酷くなり、声が能内に何度もコダマする。 揺れる視界の端から――黒い塊が踊りながらやってきて、視界が狭くなっていく。 倒れて身体を丸める女に向かい蹴ろうとする男の肩を軽く叩いた。 振り向いた男の顔を――渾身の力で殴り飛ばす。男は飛ばされて棚に身体を強く打ち、女の隣でそのまま倒れた。 こんな状況なのにオレの頭は酷く冷静だ。鼻が潰れ血が流れる男の前に、ゆっくりと足を上げる。 もちろん――踏み潰す為に。骨が潰れる音と共に鮮血が舞う。 何度も何度も音は鳴り響き――その度に鮮血がオレの足と店を汚していった。 心を踊る感情。どれだけ踏んでもそれが消えない――この感情は――
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