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「内臓ねぇ……筋肉も食べれるし、内臓も美味しいよ」
「そりゃそうだな。その気になれば骨も脳も食べれる。食べたくないけどな」
解剖が終わったらしく、お目当ての肉を持ちながらロウスはそう言って笑った。
――まぁそれが普通か。そんな事あんま無いのが当然だよな。
「そう言えば、行くところ無いよな? どうする?」
「……なんで知ってんの?」
疑問に思った言葉がすんなりと飛び出し、ロウスに対する警戒心が酷くなった。
オレが話したのは名前だけで、変な世界に来たことやオレについてのことは全く話していない。
もしかして……ストーカー? なんかオレがここに来た理由知ってるっぽいし、でもこんな物騒な所で野宿……
「宛てが無いなら一緒に来るか?」
ロウスはそう言いながら、しゃがみ込んで考えているオレに右手を差し出す。
それを見たら、なんだか笑えてきた。オレの人生を変えた時と同じ光景だからだ。
もちろん黒いローブなんか着てなかったし、血を浴びてなかったが他は一緒。
「じゃあ……お願いする」
そう言って手を掴んだ。――昔はこれがきっかけで自分を取り巻く環境が全て変わった。
良い環境とは言えなかったところだが、昔よりはマシ。今回も環境が変わるだろう。
どんな環境になるかなんて知らない。けど良くなって欲しい。切実な思いだ。
「じゃあ行くか。『テレポート』」
ロウスは握られた手を見た。黒いローブから少しだけ覗く顔が嬉しそうに微笑んでいた。
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