仲裁

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「フェニ……お風呂、気持ち良かった?」 あれから三十分あまり。フェニをなんとか洗い終えて、お風呂を終わらせる事に成功した。 暴れまくりで、尋常じゃなく大変だった。おかげ様でオレの服は水滴がびっしょり。 今は、そんなフェニにささやかな仕返しを込めて、髪をタオルでほんの少し強く拭いている。 だけど――フェニはそれすらも笑顔で楽しそうだから、切なくなって普通に拭くことにした。 オレと一緒のお風呂……そんなに楽しむものか? 「両手上げてー」 服を着せる為に指示をすると、フェニはパパっと手を高く上げる。 昨日買った服を手に取り、チャチャっと着せてあげた。 「下は自分で着てね」 下くらいなら小さなフェニでも自分で着れるだろう。 オレも着替えたいからそう言って、返事をしたフェニを撫でながら脱衣所を出る。 随分と景気良く濡らしたな……まぁ、ローブを羽織っても大丈夫か。フェニの前だと着替えられないしそれしか無い。 ローブを羽織り、裾を伸ばしたりして準備をしていると、ホクホクと湯気を出したフェニが後ろから抱き着いてきた。 いつもはツインテールで、オレンジ色の髪を縛っているのに今日は下ろしている。 そして何故かご満悦の表情だ。とってもニコニコ笑っている。 「……とりあえず転移するよ?」
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