仲裁

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「ロウス、おはよう」 「ハイハイ」 転移して部屋の中にいるロウスに定番の挨拶をすると、かなり適当に返事をしてきた。 どうやら今日もやる気がないみたいだ。目はトロンと眠たそうだし、ロウス愛用の黒いローブはシワだらけになっている。 大きな欠伸を一度してから机の上にロウスは手を伸ばす。そして温かく香り立つ紅茶を飲みながら話し始めた。 「ユウ、お前戦争に行った事はあるか?」 突然の質問。戦争と聞いて頭に軽い衝撃が走ったが、それはすぐに収まった。 「戦争は無いけど……それに近い体験なら死ぬほど」 光景が頭を過ぎる。血を吐き、頭を抑えながら激痛に苦痛の悲鳴を上げる人達。 燃やされ黒く焦げた炭を尻目に道を歩く。誰かがそれを蹴ると炭がえぐれ、骨が見えた。 一つの銃声、えぐられ貫通した銃創から吹き出す深紅な液体。それに銃を向ける自分自身は、笑うことも怒ることも無い。 生きる為に他人を殺し、自分を殺す。食べる為に殺しを繰り返し、感情が生まれる。 話しに興味が無いのか疲れたのか、どちらかわからないが胸の中で眠るフェニ。気がつけば強く抱きしめていた。
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