仲裁

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――目の前に広がる光景。 大地を大きく揺るがす兵士達の足踏みは、地面を伝って心臓をも震わす。 大気を揺るがす怒声、罵声、悲鳴――声の一つ一つは潰れて聞こえないが、鼓膜を震わせ心が大きく脈打った。 飛び交う様々な色の魔法。属性を固めた球体から、槍などの武器状の魔法。様々な魔法が空を舞う。 戦場から上がる黒煙は、人が焼けた独特の匂いを風に乗せて周りに撒き散らす。 白い鎧を着てる兵士と、黒い鎧を着てる兵士が戦っていた。 ある者は手に持つ武器で相手の首を落とし、踏み潰す。ある者は魔法で人を殺し、それを見ていやらしく笑っていた。 目が自然と熱くなる。我慢が出来なくなり、頬を伝って何かが落ちると激しい頭痛がした。 一つの声が頭を何度もコダマする。地面に膝をつき、オレは認めたくなくて地面を殴った。 何度も何度も自分の中で響き渡る欲望。吐き気がし、頭の痛みが身体の細部にまで広がる。 痛みに耐え戦場を何もせずにただただ見ていると、白い鎧の兵士がそばに近寄り手を差し延べた。 一瞬だけ頭が震え、澄んだ音が響く。そしてオレは差し延べられた手を叩き、自分の力で立ち上がった。 不思議と――痛みが無い。あんだけ騒がしかった頭の中身も、今は静かだ。 自分の身体を見渡していたその時――視界の端に黒い影が走った。
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