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「少し借りようかな?」
殺した兵士の腰にかかっている長剣に手を伸ばし、ゆっくりと音を立てて鞘から抜いた。
血糊が多少ついているが、良い剣だ。柄は慎重に手入れがされておりとても手に馴染む。
長剣はお遊び程度しか使ったこと無いけど、今は銃を使いたくない。
人を斬りたい、人を直接殺したい。肉を斬って骨を砕き、血糊を体中に浴びて余韻を楽しみたい。
だからロウスから貰った魔導銃は、ローブの中に入れたまま使わない事にした。
薄く――笑いながらオレは戦場へと向かう。オレに気づいた一人の兵士が、剣を振り回す。
人を殺すのは嫌いだ。何回やっても慣れるもんじゃないし、殺す度に悪夢を見る。
「あれ?」
一瞬で間合いを詰めて兵士に近寄り、頭をヘルムごと斜めに切り裂く。
でも人を殺すのは好きだ。何回やっても飽きないし、その度に心を子供のように弾ませた。
割れたヘルムの残骸と、半分無くなった頭から吹き出す真っ赤な噴水を浴びる。
顔に少しついた血を指でなぞると、黒い兵士達に囲まれていた。
どうやらさっき殺したのは黒い兵士だったらしい。突然現れたオレに、黒い鎧の兵士達が警戒している。
「どっちが正しいんだろ?」
嫌いな行為は好きな行為。殺しに嫌悪して吐いたこともあったし、殺しに快楽を覚え楽しんだこともあった。
生きる為とは言え殺しはしたくなかった。生きる為じゃなくても人を殺したい。
一つ一つ、しっかりと覚えている。どちらも記憶に残っているし、その時の光景も脳内にちゃんと浮かぶ。
「……まぁいいや」
小さく呟いて黒い鎧の兵士を、縦から真っ二つに切り裂いた。
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