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「名前は……竜崎 佑。オッサン……の名前は?」
黒いローブで隠していて、顔も見えないけど目の前にいる人をオッサンと呼んだ。
なんとなく……焼肉の良い匂いにのって、加齢臭みたいなのがする気がしたからだ。
木の根っこに腰を下ろしたままふと横を見ると、黒いローブの男は膝と肘を地面に付けて紙皿を持ちながら落ち込んでいる。
流石に失礼――だな。少しだけ控えよう。
「……泣きたくなってきた。29でオッサン呼ばわりされるなんて……」
「29……中途半端な年齢のような……まだ若い、かな?」
前から知ってたけどオレはどうやら常識知らずみたいだ。
ついつい思った言葉が飛び出し、それを聞いた黒いローブの男は凄く落ち込んで地面に横たわった。
それと同時にオレのお腹の虫が鳴り響き、なんとも言えない虚脱感が全身を襲う。
「……オッ、兄さん。焼肉食べても良いんだよね?」
「中途半端に言葉を変えやがって……まぁ良い。お前の為に焼いたんだからどうぞ」
……気になる事を言っていたが、今はそんな事よりも食欲の方が断然上。
肉がたっぷり乗った紙皿と箸を受け取り、味を楽しみながら肉を食べ始めた。
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