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あるところに
一匹の羊がいました
その羊は子供の頃に沢山の愛情を注がれて育ちました
周りから礼儀や道徳や気の使い方も教えてもらいました
その羊が少し成長した時、周りの都合で、ある"役"をするよう強いられました
その役とは、"頑張り屋"、"頼られ屋"、そして"嫌われ屋"
しかしその羊は少し成長したとは言えまだまだ子供でした
その羊は常に"頑張り"、周りに気を配り"頼られる"様に努力し、尚且つ人がやりたがらない"嫌われ役"を勤めました
ずーっと
ずーーっと
ひたすら頑張りました
その羊が頑張り始めて10年が経った頃
ふと、気付きました
「何故…?」
"役"を強いられ、頑張り続けた結果が現状を作っているならば
何故孤独なのだろう
羊の目からは一筋の、本人でさえ気付かない、水が流れ落ちました
その羊は心に少し、モヤモヤとした物を患ってしまったようです
「他人に頼りたい…、自分は弱いんだと言ってしまいたい…、助けて欲しい…」
羊はそう思いました
しかし、それは叶わぬ願いです
なぜならば羊は"頑張り屋"、"頼られ屋"、そして"嫌われ屋"で居なければならないから
その羊の周りは「あの羊はしっかりしている」、「あいつは一人でも大丈夫」と言っています
羊は自分の弱い所を見てほしい、認めて欲しいと思いつつそれを心にしまい込みながら"役"を努めました
時には狼の皮を被り、必死に弱さを隠しながら"役"を努めました
そして毎晩一人になると狼の皮を脱ぎ声を殺して泣いています
羊は常に孤独、そして矛盾と戦っています
"頑張り屋"という名の狼の皮を被っているにも関わらず、皮の中の自分を見てもらいたいと
しかし決して見せません
脱ぐ事が出来るにも関わらず――
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