思い出に生きる母

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あの時は泣けなかったのに 泣けないことにただただ情けなくて、不肖の娘だと己を責めたのに 今になって 一年が過ぎようとする今になって 止まることなど知らぬとばかり溢れ出して 唇を噛みしめて声を殺そうにも、震えて歯がかち合わない 拭っても拭っても心の奥底から あの日あの時の笑顔が言葉が…真剣に諭す瞳が、自分のことのように喜ぶ声が飲み込んだ息の隙間からわいてくる 何度もみた 何でわざわざ保護までして取っているんだと嘲笑った母さんからのメール 殆ど消えて20も残っていない そこには 笑ってくれていた頃の母さんが残っていた 手を握って励ましてくれたあの強い母さんがしっかりと文字として残っていた 短い一通一通に母さんが生きていた温もりが 写真なんかよりもリアルに刻み込まれていた 居たのだ此処に 確かに生きてくれていた 笑っていた 案じてくれていた 喜んでくれていた 母さんが生きていた 合格したことも伝えられなかった 頑張ったねと誉めてもらえなかった 泣いてるのに理由を聞きに隣にきてくれない 悔しくて悔しくて 居たのに 残っているのに 母さんはもういない 修学旅行前に笑って見送ってくれた人は 入社のために飛行機に乗る私を見送ってはくれない 悲しくて 今更でる涙に 独り立ちしなければならないのにと一人焦って でも止まらない感情 どうかこの悔しさが この悲しみが 私の足を止めることがないように そうただ願ってる 弟も父も生きていてくれるから 私も未来を生きていく .
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