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目をしばまたたかせながら重く感じる体を起こし辺りを見回すと、明るかったはずの部屋がいつの間にか薄暗くなっている。
寝ぼけながら窓を覗くと、既に日は遠くの山に暮れてかけていた。
「桜ねえちゃん。居る?」
扉から、ゆっこらしき声が聞こえる。
その声に私は「はいよ」と返事をしながら、覚束ない足取りで扉に歩み寄った。
そして扉を開けると、思った通りそこにはゆっこが立っていた。
ニコニコと可愛い笑みを浮かばせている。
「桜ねえちゃん、来て来て」
ゆっこはそう言って、有無を言わさず私の腕を掴み一階のダイニングに向かった。
そして彼女がダイニングのドアを開けた瞬間だ。
パァン!という破裂音が幾つか上がるのと同時に天井から吊るされた小さな手作りのくす玉が割れる。
中からは『桜ねえちゃん おかえり!』と書かれた垂れ幕が現れた。
寝ぼけと驚きが入り混じり、右往左往する私の視界に次に入ったのは、テーブルの上に並べられた豪華なご馳走と誕生日さながらのケーキの姿。
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