Ⅰ.故郷

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   卓くんの隣で彼の手を握ってケーキを必死守ろうとしている男の子が、ゆうくん、五歳。  これまた、遊び盛りで可愛い時期だ。  そして、その向かいに座り二人の奮闘を見つめているクールな少年が九歳の晃(あきら)。  ちょっと最近生意気になってきた。  どの子も私の大事な大事な弟たち。   そして―― 「ほらほら、早く座んな」  そう急かすのは、この家に住み込みで働いている源太先生。  本名は角田源太(つのだげんた)さん。  お母さんの高校時代の後輩で、昔は暴走族に入っていて、人には言えない悪事を沢山働いていたらしい。  その過去に見合い外見はかなり厳つく、服装はいつもサイズの大きめなのジャージを腰に履き、首には太いネックレスがぶらさっている。  性格も荒々しいし、怒るととてつもなく恐いけど、根はすごく良い人でここに住む子供達、そして私にとっても父親のような人。  それと、これはごく一部の人しか知らない事なんだけど、源太先生はどうやらお母さんに随分前から好意を抱いているらしい。  
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