prologue

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 潮風が香り、青青とした山と海の両方が見えるこの田舎町は、多少不便だろうが何だろうが、私には何処よりも輝いて見える。  その気持ちも、故郷であるこの町を出た二年前と、変わらないまま――。  ただ、あの頃はこの町を見て、こんなに胸が締め付けられることはなかった。  綺麗で優しいばかりのこの景色に、ここまで私の胸を強く締め付ける力なんてない。  きっと締め付けているのは、景色ではないんだろう。  こんなに強く切ない気持ちを、私に与えることができるのは、今も昔もこの世でただ一人……。  今はもう、傍にはいない  彼だけだ――――。  
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