ⅩⅣ.幸せ

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  「幸せ……だった?」  お母さんは、俯いていた顔を少し上げ、横目で私を見る。  "だった"の部分が余程引っかかったのか、そこを強調して聞き返してきたお母さんに、私は笑顔で答えた。 「勿論、今も幸せ。多分ずっと幸せだったんだと思う。ああ聞かれた時はその事に気付いてなかったけどね」  その答えにお母さんは驚いたのか、赤く色づいた瞳を大きく見開いた後、それを揺らす。  その揺れる瞳から決して目を逸らさないまま、私は言葉を続けた。 「私の事をまるで自分の事のように心配してくれる友達がいるし、血が繋がってないのに帰ってくれば温かく迎えてくれる賑やかで楽しい家族もいる。……迷惑がらずに、私を思う存分泣かせてくれるお父さんがいて、嫌われる覚悟をしてまで、私の幸せを願ってくれるお母さんがいて……。病気に負けずに、私に恋してくれる人がいる」  
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