ⅩⅣ.幸せ

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   沢山の人に支えられて、ここまで生きてきた事。 「こんなに安心して、周りに迷惑や心配をかけられる人生って、そうそう無いよ」  愛されてる事にようやく気付けた。  私は充分幸せで、こういう人生を送れてるのは全部―― 「お母さんのお陰だと思う」  ――あなたが私を見つけてくれて、私の幸せをずっと必死に守っていてくれたからだ。 「ありがとう」  私が満面の笑顔でそう言うと、お母さんの整った顔はみるみるうちにに歪み、また新たな涙が頬を濡らした。  それからしばらくの間、私達はお互いにその場所から一歩たりとも動かなかった。  お母さんはすすり泣き、私はその声をじっと静かに聞いていて……。  右隣からの小さな嗚咽が徐々に聞こえなくなった頃、ようやく嗚咽以外の声が私の耳に届いた。  
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