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「まさか……またここに来るとは思わなかったわ」
突然聞こえた呟きのような言葉の意味が解らず私は「え?」と聞き返す。
それと同時に、お母さんが私に真摯な眼差しを向けた。
「この街はね……桜。あなたの生まれた街でもあるのよ」
唐突に明かされた事実に私は驚きのあまり、声も出ずただただ目を丸くする。
激しい動揺を見せる私から、お母さんは視線を逸らし正面を向いて語り続けた。
「あなたは玲於奈と同じ病院で、玲於奈より一週間前に生まれた。あなたと初めて出会った日、私……実は玲於奈を見にこの街に来たの」
私と玲於奈が……同じ病院で?
私には知る由もない事実。
その事実に心を揺さぶられながら、私は僅かに喜びを感じた。
"私達は生まれた時も一緒だったんだ"って――。
けれど喜びも束の間、次にお母さんの口から発せられた言葉によって、私は更なる衝撃を受けた。
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