ⅩⅣ.幸せ

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  「けどね……私、その頃自分の子供を流産してしまったばかりだったのよ」 「え……」  ……流産?  その言葉に対しての困惑を隠しきれず、私の眉間には無意識に出来た皺が浮き上がる。  お母さんの横顔には、憂いに満ちた悲しみ笑みが浮かんでいた。  私は少し頭の中を整理した後、まず最初に浮かんだ疑問を突きつけた。 「結婚は?」 「してないわよ。未婚のまま」 「相手は?」  私がそれを聞いた瞬間、今度はお母さんが微かな動揺を見せる。  そして、私の様子をちらちらと窺った後、言いずらそうに溜め込み……ぽつりと小さく答えた。 「……角田くんよ」  唖然。  
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