ⅩⅣ.幸せ

22/37
前へ
/645ページ
次へ
  「えっ、えーっ! 嘘っ! 嘘でしょ!?」  長い沈黙を経た後、大騒ぎし出した私をお母さんは慌てて抑える。 「ちょっと、ここ病院よっ。静かにしなさいっ」  二十歳にもなって親に軽く叱られた私は、はっと我に返り自分の口元を右手で覆った。  そして覆ったまま、口を開く。 「だってお母さん、源太先生の気持ち知らないんじゃ……」 「知らないなんて一言も言ってないわ」  お母さんは呆れたように溜め息をついた。 「角田くんとは……妊娠する随分前から、そういう関係だった。厳密に言うと高校時代からね」  私はふと記憶の糸を手繰ってみた。  そういえば――。  "お母さん恋人とかいた?"  "いたな、一人"  ――じゃあもしかして……源太先生が言ってた"恋人にしちゃ頼りなくて、全然恋人らしく無かった彼氏"というのは、自分の事?  一人で納得をしている私をよそに、お母さんは話を続けた。  
/645ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1642人が本棚に入れています
本棚に追加