ⅩⅣ.幸せ

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  「けど……あまり綺麗な関係では無かったわ」 「え?」と言いながら私は口を覆う手を外す。  お母さんは私を一瞥した。 「だから、私は彼に妊娠の事を隠した。妊娠がわかって、私は角田くんに一方的な別れを告げて……。親とも隔たりがあって、本当に心を許せる人が誰一人居なかった私にとって、お腹の子は私の生き甲斐だった」  そこまで言うとお母さんは一息をつき、虚ろな笑みで悲しげな声を出した。 「でも私は……子供を産める体じゃなくて、その子はたったの四カ月で死んでしまった。私のせいで……。その直後に玲於奈が生まれて……本当だったら、甥の誕生を喜ばなきゃいけないのに……私は……」  玲於奈の日記を持つお母さんの手に、ぐっと力が込められたのがわかった。  
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